RKBグループのスローガン&キービジュアルの共創プロジェクトを振り返る
サインコサイン代表の加来の地元でもある福岡県で広く親しまれている放送局・RKB毎日放送。その親会社でもある、RKB毎日ホールディングスが掲げた新グループスローガン「Make Wonder わくわくを、ぞくぞくと、」の共創をありがたいことにサインコサインで支援させていただきましたが、その誕生の背景には、グループとしての物差しの不在や、一枚岩になりきれないもどかしさもありました。
そこでプロジェクトメンバーの皆様とともに、経営会議での問題提起を起点に、全社アンケート、横断プロジェクトの立ち上げ、LEGO® SERIOUS PLAY®やPinterestを用いた共創ワーク、十数回にわたるワーディングセッションへ。言葉を自分たちのものにするための徹底したプロセスを弊社にて伴走させていただきました。
本インタビューでは、立ち上げの意図、共創の設計、ローンチ後の変化、そしてこれからの展望までを関係者の言葉でたどります。スローガンを読むものから使うものへ。RKBグループが「わくわく」を連鎖させるために、何を決め、どう動いたのか。その手触りについて、プロジェクトを主導していただいたRKBグループのお二人にお話を伺いながら、皆様にもご紹介します。
お話を伺ったお二人
光永 直寛さん(写真右)
RKB毎日放送株式会社 経営管理局・技術局石塚 太郎さん(写真左)
RKB毎日放送株式会社 経営管理局 総務広報部
Q. なぜ、いまグループスローガンが必要だと感じたのですか?
A. グループ全体を見渡したときに、同じ方向を向いているはずなのに一枚岩ではない感覚が社内にありました。特に新規事業やM&Aの判断において、グループとしての共通の物差しが見えにくい。ある経営会議での「拠りどころとなる言葉を持ちたい」というひとりの社員の提案から議論が本格的に動き出しました。
Q. 既存の放送局スローガンとの関係や、社内での初期反応はいかがでしたか?
A. すでに「Be colorful.」というRKB毎日放送としての言葉もある中で、混乱を招かないかという慎重論もありました。光永・石塚も当初は前のめりではありませんでしたが、全社アンケートを実施したところ、多様で熱量の高い声が集まり、必要性が明確化してきました。
そこで、社長主導で部署・世代のバランスとコミットメントを軸に横断型のプロジェクトチームが編成されるに至ったんです。
Q. 共創プロセスを振り返っていただけますか?
A. 「誰かの案を選ぶ」のではなく、「自分たちの言葉として腹落ちする」状態をゴールに置き、そのプロセスをご一緒できるパートナーとしてサインコサインさんを選定させてもらいました。ご提案の中で伝えていただいた、「会社の理念と個人の理念は、まったく同じである必要はなく、その接点を探ることが重要」という話が特に印象的でしたね。
そこから、LEGO® SERIOUS PLAY®を用いてグループの未来を具体化するワークショップ、ひとりひとりがスローガンを言語化するワークショップ、グループ全員が参加するPinterestボードを使った直感的なアンケート、そしてグループ経営陣へのデプスインタビューなどなど、様々なアプローチを通じて、言葉をつくるためのヒントを収集していきました。
それらのヒントをもとにしたプロジェクトメンバーによる言語化セッションも、サインコサインさんにファシリテートいただきながら10回以上は開催しましたね。
Q. そして生まれた言葉と、込められた想いを教えてください。
A. そして生まれたグループスローガンは「Make Wonder わくわくを、ぞくぞくと、」です。放送の枠を超えて、グループ内の多様な連携を起点にわくわくを連鎖させ、地域・パートナー・生活者へと広げていく意思が込められています。
言葉を使える状態にするため、わくわくするような躍動感のあるタイポグラフィとぞくぞくと広がっていく明るいグラデーションを基調にキービジュアルを設計していただき、特設Webサイトはスクロールに呼応してそのビジュアルが広がる体験に仕立て、コピーと表現をしっかりブリッジしているものになったと思います。
ラジオとテレビから、はじまった
わたしたちの冒険はいつも手探りで、体当たり。
ときには迷い、ときには壁にぶつかって…それでも、仲間を増やし、
フィールドを広げながら、
わくわくが呼んでいる方へ歩んできた。答えの見えない難題も挑戦と考えて、
未知のモノも、驚きや新しい定番へ
わくわくすることで 「?」を「!」に。わくわくは、熱量
わくわくは、期待の入り口
わくわくは、人の心を動かす力時代が変わっても、
人の気持ちを、暮らしを、
未来を明るく照らしたい。
だから、わたしたちの冒険はこれからも続く。
枠をこえて、今日をこえてMake Wonder わくわくを、ぞくぞくと、
Q. ローンチ後の社内の手応えは?
A. まず多かったのは「いい意味でRKBらしくない」「なんか、いい」という声です。真面目さや堅実さは保ちながら、挑戦や遊び心の温度を一段上げる、その体温が共有された実感があります。
運用面では、イントラや社内報で策定の背景や取り組みの内容などを継続発信し、社用PCのステッカーやオンライン会議背景、イントラのトップ画面など、日常のタッチポイントに素早く展開しました。意思決定の場でも、スローガンが価値の物差しとして話の起点になりつつあります。

Q. 実際のビジネスの動きにも変化は生まれていますか?
A. スローガン単独の因果と断言はしませんが、「わくわくを、ぞくぞくと、」に沿った外部連携や投資判断がいくつも前に進みました。映像領域のパートナーシップ強化や新規領域へのアプローチなど、グループの外へ可能性を広げる案件が続いています。共通言語があることで、検討スピードと納得感が上がったと感じます。
Q. おふたりの実感を教えてください。
光永さん:「外部に作ってもらうスタンスではなく、自分たちで考え抜いて作ったという自負を持てているから、とても納得感があります。」
石塚さん:「つくった後こそ大事にしたいですね。制度や日常の言動にまで落とし込めてこそ意味があると考えています。」
Q. これからの展望は?
A. 目指すのは「スローガンを言うだけの会社」ではなく「スローガンをもとに動く会社」です。
社内ストーリーの継続発信、成功・学びの可視化、他社・地域との共創の加速、それらを通じて、Make Wonderをグループの当たり前の振る舞いへと根づかせます。わくわくを、ぞくぞくと、連鎖させていきます。
あとがき
今回のプロジェクトから大きく3つの学びがありました。
第一に、作り方が成果を決めるということ。外から良さそうな言葉を持ち込むのではなく、自分たちで考え抜くほど腹落ちし、運用の推進力になります。
第二に、言葉は使ってはじめて機能するということ。イントラ・会議体・制度・クリエイティブなど、日常のタッチポイントに素早く展開する設計こそ本質でした。
第三に、連鎖の設計です。表彰や福利厚生、評価や採用広報に思想を織り込み、意思決定の物差しとしてわくわくを回し続ける。
このスローガンを掲げることはゴールではなく、これを旗印に行動を変えてこそ意味があります。RKBグループの進取の精神と多様な連携が、この言葉を通じてさらに加速していくことを楽しみにしています!